2016年(平成28年度)6月10日定例県議会議事録

福羅浩一 一般質問、インターネット録画中継

問1 今治工業高校では、国のスーパー・プロフェッショナル・ハイスクールの指定により、どのような取組みを行うのか。

【教育長】

 今年度、世界有数の海事都市である今治市に新設した今治工業高校の機械造船科は、基幹産業である造船業に夢を抱き、即戦力として求められる「確かな知識・実践的な技能・高度な技術」と「総合工学の視点」を身に付け、常に問題意識を持って仕事に取り組むことができる、「職業意識・倫理観」の高い専門的職業人の育成を目指している。
 このため、同校では、今回指定を受けたスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール事業を活用し、地元造船関連企業等で構成する「造船教育推進委員会」の協力を得て、現場技能を習得するための熟練技術者による実技指導、造船業界で働く卒業生との意見交換、海外勤務経験者とのグループワーク等を行うほか、大学・研究機関・企業等と連携して設計や開発について深く学ぶため、省エネ船開発試験設備の見学や、大学との連携講座の開設等に取り組むこととしている。
 県教育委員会としては、こうした学校と地域が一体となった、「地元で学び、地元で就職し、地域経済の発展に寄与する」いわゆる「地学地就(ちがくちしゅう)」による人材育成は、産業教育を核とした地域振興のモデルになるものと考えており、他の職業高校への普及展開を行うなど、今後とも、本県職業教育の更なる充実に努めてまいりたい。


問2 地域経済の活性化を図るため、地域産業の担い手となる人材の確保と育成にどのように取り組んでいくのか。

【経済労働部長】

県では、県内4つの高等技術専門校において、地元企業のニーズを踏まえた各種職業訓練を実施するとともに、県職業能力開発協会と連携した技能検定に努めているほか、ジョブカフェ愛workでは、中小企業における人材の採用・育成力向上のためのコンサルティングや、中高生向けのキャリア教育に活用できるスゴ技企業の紹介冊子の作成など、産業人材の確保・育成に取り組んでいるところ。
 また、人口減少や若年層の離職率の高止まり等による人手不足が懸念される中、今治地域の造船業では技能の高度化や生産性の向上が、また、東予地域の金属・機械加工業や松山地域の情報サービス業、県内の観光産業を担う宿泊・飲食サービス業では人材の定着率の向上が課題になっていることから、これら4つの産業分野について、新たに、初級や中級の技能レベルに応じた訓練プログラムの実施や技能評価システムの開発等のほか、造船分野では特に設計技術者の育成などに3か年計画で取り組むこととし、今回の補正予算に関連経費を計上している。
 今後とも、愛媛労働局をはじめ、市町や県内企業、経済団体や教育機関などと十分に連携・協力しながら、オール愛媛の体制により、地域産業の担い手となる産業人材の確保・育成に積極的に取り組んで参りたい。


問3

(1)県防災対策基本条例の改正及び熊本地震の教訓を踏まえ、本県の防災対策のうち、初動体制及び自助・共助について、今後どう取り組んでいくのか。

【知事】

大規模災害時における初動体制の構築は、救助活動や被害の軽減を図る上で、極めて重要であると認識していることから、県では、職員による宿日直や地方局・支局の近傍地への幹部職員の居住、災害時の職員行動計画や業務継続計画の策定など、順次即応体制の充実を図ってきたほか、災害対策本部オペレーションルームの整備や災害情報システムによる被害情報等の早期収集、防災関係機関との連携強化など、迅速で、的確な初動体制の構築に努めている。
 しかしながら、発災直後の初動段階において、「公助」を行き届けるには限界があることから、「自助」と「共助」を促進することが非常に重要であり、平常時から県民の防災意識を醸成し、積極的かつ主体的に行動できる組織や人材を育成しておくことが大切であると考えている。
 このため、県では、防災意識啓発講演やキャンペーン、「シェイクアウトえひめ」等の実施により自助の意識の醸成に努めるとともに、共助を促進するため、自主防災組織の活性化や、その活動の核となる防災士やえひめ防災インストラクターの養成に積極的に取り組むほか、今年度、新たに、地域防災リーダーの連携強化と交流を目的として、自主防災組織や防災士の代表者による連絡調整会の設立や県民が一堂に会しての「えひめ自助・共助推進大会」を開催するなど、共助を担う組織づくりや人材づくりを積極的に推進し、地域防災力の一層の向上を図ることとしている。
 県としては、今後も、県防災対策基本条例の理念や熊本地震の教訓等も踏まえ、市町や関係機関、企業等との連携のもと、「公助」の推進はもとより、「自助」「共助」の取り組みの充実強化に努め、「オール愛媛」で災害に強い愛媛づくりにまい進してまいりたい。


(2)ドクターヘリ導入に向けた準備状況はどうか。また、拠点整備を含め、運航開始に向けて、どのように取り組んでいくのか。

【保健福祉部長】

ドクターヘリは、今回の熊本地震でも、災害・救急医療における有効性が再認識されたところであり、本県では、平成29年2月までの運航開始に向け、本年4月に運航調整委員会を設置し、出動や搬送等に関する調整作業を行うとともに、ヘリ搭載用の医療機器の調達や基地病院となる県立中央病院の改修費等を今議会に予算計上し、これらの整備を進めることとしている。
 また、将来にわたって、ドクターヘリを安定的に運航するため、愛媛大学医学部等の協力を得ながら、搭乗医師等の確保育成を計画的に進め、県内三次救急医療体制の底上げを図ることとしており、ドクターヘリの導入を契機として、救急医療提供体制の一層の充実・強化に取り組んでまいりたい。
 なお、ドクターヘリの運航経費の財源については、補助率2分の1とされながら、これを含む国庫補助金総額が確約されていないほか、格納庫に係る経費等の補助対象外経費も発生するため、今後も、国の責任において、恒久的で柔軟性の高い財政支援制度を確立するよう強く要請していきたいと考えている。


問4 TPP協定の影響が懸念される本県の農林水産業に対して、今後どのような支援策を講じていくのか。

【知事】

TPP協定については、参加各国の国内事情等から発効時期は不透明であるが、本県の農林水産業への影響については、主要産品であり、関税の下げ幅が大きい畜産や柑橘への影響を懸念しているところであり、生産現場における将来に対する不安を払拭するとともに、これまで以上に、農林水産業の体質強化と競争力向上を進めていくことが重要と考えている。
 このため県では、2月補正予算で創設した「農林水産業体質強化緊急対策基金」を有効に活用し、高品質化や低コストにつながる生産基盤整備をはじめ、県オリジナルブランド産品の生産拡大、国内外への販売力強化など、本県独自の攻めの対策を講じるとともに、今回の補正予算においても、国のTPP対策予算も活用しながら、産地の収益力向上につながる施設整備や高収益作物等への改植支援のほか、加工用うんしゅうみかんの安定供給体制や「伊予の媛貴海」の高品質流通体制の構築等を支援する経費を計上し、取り組みを強化したところ。
 また、先月末の国への重要施策要望においては、私から直接、森山農林水産大臣に対し、果樹経営支援対策や畜産農家の経営安定対策の強化など、地域の実情に配慮した万全の対応を改めて強く要請したところであり、今後は、今秋を目途に取りまとめられる国の具体的なTPP対策を見極めるとともに、関係団体等とも連携しながら、県独自のきめ細かな支援に努め、愛顔あふれる農林水産業の実現に取り組んで参りたい。


問5 国が幼児教育の無償化に向けて取り組むことについての所感はどうか。また、幼児教育・保育の充実について、今後どのように取り組んでいくのか。

【保健福祉部長】

就学前の幼児教育は、人間形成の基礎を築き、調和のとれた発達を促す上で非常に重要なものであることから、全国知事会においても、国に対し、全ての子どもが、世帯の所得に関わらず等しく質の高い教育を受けられるよう、幼児教育の無償化に取り組むことを要請しているところ。
 本県としても、本年度から、低所得の世帯を中心に保育料の負担軽減が図られたことを一歩前進と評価するが、幼児教育の無償化を推進する「幼児教育振興法案」が先だって国会に提案されたことから、更なる教育の質の向上や恒常的な予算確保が担保され、最終的には全ての子どもの無償化が実現するよう、要望を継続していく所存。
 本県においては、幼児教育や保育の一層の充実・強化を図るため、これまで、私立幼稚園への独自の上乗せ助成や耐震化の促進をはじめ、市町のニーズに対応した認定こども園等の施設整備への支援のほか、幼稚園教諭・保育士の資質向上を図る階層別研修や低年齢児・障がい児に対応した専門研修などの人材育成に取り組んでおり、今後とも、市町や関係団体等との緊密な連携のもと、国の支援制度を最大限活用し、これらの取組みを着実に推進してまいりたい。


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