2009年(平成20年度)9月28日定例県議会議事録

1 上島町における架橋の必要性と有効性をどのように考えているのか。また、岩城橋の着手見通しについての見解はどうか。

(知 事)
上島架橋は、移動時間の短縮や天候に左右されない往来を確保することにより、通勤・通学はもとより、救急医療・消防防災における住民の不安を解消する等の様々な整備効果があり、合併後の行政の効率化や地域活性化のために必要不可欠なものと認識している。 このうち、生名橋については、難航していた海面下での橋脚の基礎部の工事も終え、現在、順調に主塔工やPC桁の架設工事を進めているところであり、現計画どおり平成22年12月末の供用に向け、鋭意工事促進に努めて参りたい。 また、上島架橋は、生名橋と残る岩城橋が完成して初めて本来の目的を達成するものであり、岩城橋の建設は必要と考えている。 ただ現在、新政権下における公共事業に係る方針が明らかになっていないこともあり、着手時期については、今後、国の動向や県の財政状況を見極めながら検討していく必要があると考えている。

 

2 しまなみ海道の通行料金引下げに伴う効果と今後の対応について

(1)高速道路料金引下げを最大限活用し、本県の地域活性化と産業振興につなげるための高速道路利用促進にどのように取り組んでいくのか。

(土木部長)
県では、高速道路料金の大幅な引下げが明確になった今年の2月に、本県の地域活性化や地域振興を図るため、全庁的な組織として「愛媛県本四道路等高速道路利用促進会議」を設置して検討を行い、3月末に、平成21年度の高速道路の利用促進施策を取りまとめ、利用促進に努めてきており、一定の効果をあげている。 また、しまなみ海道などの本四道路について、四国4県知事で構成する「本四道路利用促進会議」を本年4月に設置し、観光誘客や物流活性化をはじめ、各種の利用促進施策を実施しており、四国ツーリズム創造機構などの関係機関とも連携して、本四道路の利用促進に努めているところである。 今後は、新政権下における高速道路の無料化について、その動向を見守る必要があるが、引き続き、しまなみ海道をはじめとした高速道路を活用し、地域活性化や産業振興につながるよう努めて参りたい。

(2)今後、誘客促進のための取組みをどのように推進していくのか。また、県内自治体や他県と連携した取組みなども併せて問う。

(経済労働部長)
高速道路料金の引下げは、国民の旅行意欲の高まりによる新たな観光需要を生み出す効果をもたらし、4月から7月までの県内の主要観光施設入込客数は、前年同期に比べ、1.3%の増となっており、特に、しまなみ地域では、しまなみ海道10周年記念事業の開催もあり、11.3%の増となるなど、ここ数年にない順調な状況となっている。 このような中、四国4県では、本年7月に新たな広域観光推進組織として、民間事業者の参画のもと「四国ツーリズム創造機構」を設立し、四国のイメージアップと観光客の来訪促進などに取り組んでいるところであり、県内においても、各市町や民間事業者で組織する「四国観光立県推進愛媛協議会」や「南予広域連携観光交流推進協議会」等の各圏域協議会を通じて、個性ある観光資源の掘り起こしやテーマ性のある観光ルートの整備等に取り組んでいるところである。 今後とも、これらの広域観光組織を最大限に活用して、地元住民・市町・民間事業者との連携を強化し、着地型旅行商品の造成など、観光客の滞在時間の拡大につながるような魅力ある観光地づくりに取り組んで参りたい。

 

3 内航フェリー支援策について

(1)フェリー航路維持の必要性について、どう認識しているのか。また、今後どのような支援策を講じていくのか。

(企画情報部長)
本県発着の航路は、一般航路が9航路あり、関西・中国・九州方面への物流や観光、ビジネスの需要に応えている。また、離島航路は25航路あり、通勤・通学など住民生活の貴重な足として利用されている。   これらの航路は、モーダルシフトの受け皿として、また、災害時の緊急輸送手段としても極めて重要な役割を担っているのは勿論のこと、とりわけ議員お話の「しまなみ海道」周辺の生活航路は、架橋とともに地域住民にとって欠かせない交通手段であると認識している。 県では従来から、他に代替手段のない離島航路に対して補助してきたほか、今年度は、高速道路料金引下げの影響を受けたフェリー航路への支援も行っているが、無料化となれば県独自では到底支えきれないところ。 このため、高速道路の無料化に当たっては、まずは国に対し、その影響にも十分配慮し、最も大きく影響を受けるフェリー航路など競合する交通機関が生き残れるような支援策の創設を求めるとともに、国の動向などを十分に見極めながら、県としてどのような対応が可能なのか検討して参りたい。

(2)県内の市町管理港湾はどのような状況になっているのか。

(土木部長)
県内には8市町に28港の市町管理港湾があるが、その内、今回の高速道路料金引下げにより影響を受けるフェリー等が発着する港湾がある新居浜市、今治市、八幡浜市の3市に対しては、議員お話のとおり、県から、本年7月に港湾施設使用料等の減免など、航路維持を図るための積極的な取組を要請したところである。 現在、新居浜市と八幡浜市においては、市独自の支援策として、本年7月から来年3月までの9ヶ月間、フェリーの運航に係る港湾施設使用料の2分の1を減免しており、これにより20年度実績を基に試算すると、新居浜市 約1,340万円、八幡浜市 約3,300万円の支援が見込まれるとのことである。 また、今治市については既に、しまなみ海道開通に伴うフェリー航路支援策として、一部、港湾施設使用料の減免を実施しており、更なる支援については、現在検討中と聞いている。

 


4 新型インフルエンザの県内状況と対応策について

(1)県内の新型インフルエンザ患者数並びにその主な症状及び治療法はどうか。

(保健福祉部長)
新型インフルエンザの患者数については、国内発生当初は全数を把握していたが、その後の感染拡大を受け、現在は、集団発生事例や重症事例を把握する体制に変更されている。 したがって、県内の正確な患者数は明らかではないが、県内では、6月16日に初めて新型インフルエンザの患者が確認されて以降、夏場に入っても学校の部活動を中心に県下全域で集団発生しており、県内で全数把握期間に確認された患者数は5人、集団発生において確認された患者数は、9月14日現在で812人である。 新型インフルエンザの症状は、突然の高熱や咳、のどの痛みなどであり、多くの患者が比較的軽症であるなど通常の季節性インフルエンザと類似している。治療法も季節性インフルエンザと同様に抗インフルエンザウイルス薬のタミフルやリレンザの投薬が有効であり、これまでのところ、県内では重症者や死亡者の例はなく、ほとんどの患者が自宅療養で順調に回復している。

(2)県内の治療薬の備蓄量及び今後の備蓄計画はどうか。

(保健福祉部長)
抗インフルエンザウイルス薬のタミフル及びリレンザについては、国において人口の45%、5,861万人分の備蓄目標を設定し、国と都道府県が分担して備蓄する計画となっている。 この備蓄計画に基づく本県の備蓄目標量は、 ○タミフル 26万7,400人分 ○リレンザ  1万4,900人分 ○合計   28万2,300人分  であり、このうち、これまでにタミフル12万2千人分を購入し、備蓄済みである。 残る備蓄目標量については、今後3年間で調達する計画であったが、今般の新型インフルエンザの発生や今後の本格的な流行に備えて、5月補正予算に加え、今回の補正予算において3年間の全数量の購入経費を計上したところである。 購入については、現在、県に備蓄のないリレンザを優先して調達手続を進めており、今後の流行動向等を見極めながら、医療現場で治療薬が不足する事態とならないよう、適切な時期に購入したいと考えている。

(3)受入可能な医療機関と患者数を、あらかじめ把握した上で、速やかに重症患者に適切な医療が提供できるようにする必要があると思うがどうか。

(保健福祉部長)
お話しのように、新型インフルエンザの本格的な流行期における患者数を想定し、重症患者の発生に対応できる医療を確保することは重要な課題であり、県では先般、県内医療機関に対して、入院診療が可能な医療機関の病床稼働率や人工呼吸器の保有状況等を調査したところ。 また、患者数については、厚生労働省が示した流行シナリオを基に試算すると、1回の流行期において、県人口の20%、およそ28万8千人が発症し、4,320人が入院、432人の重症患者が発生すると推計され、流行のピーク時には、最大500人程度が入院し、うち50人程度が重症化すると想定されるところ。 この想定では、全体として入院医療に不足が生じる可能性は少ないと考えているが、特に、人工透析患者や妊婦、乳幼児等が重症化した場合の対応について、改めて医療機関等との調整を進めているところである。 なお、休日夜間の救急医療は平常時でも逼迫している地域があることから、医療機関の適正受診に対する県民の理解と協力も頂きながら、重症患者等への医療が円滑に提供されるよう努めて参りたい。

 

5 県内におけるネグレクトの発生件数及び具体的事例はどうか。また、それらに対し、今後、どのように取り組んでいくのか。

(保健福祉部長)
    県内3箇所の児童相談所における児童虐待相談で把握された育児放棄、いわゆるネグレクトの年間の発生件数は、近年100件を超えており、昨年度は122件と、児童虐待相談の約4割を占めている。 ネグレクトの具体的事例としては、 ○ 両親の養育能力の欠如や不衛生な家庭環境から、誕生間もない乳児の養育が困難な例 ○ 母親が3人の子どもを残して外出を繰り返し、十分な食事を与えないなど養育を放棄していた例 ○ 浪費癖や不安定な収入から、6人の子どもに食事・医療を満足に与えず、衣服の汚れ等もひどかった例 などがあり、病院や市町、民生児童委員等からの連絡に基づき児童養護施設や乳児院に保護を行った。 このようなネグレクトに対しては、お話のとおり、早期発見・早期対応が重要であり、県では、民生児童委員や保育所、学校、保健所等により、地域で子どもを見守るネットワークが構築されるよう、市町に、要保護児童対策地域協議会の設置を働きかけ、先月までに、全市町において協議会が設置されたところである。 今後とも、児童虐待防止キャンペーン等により、社会全体で子どもを見守る機運の醸成に努めるとともに、各地域協議会において、要保護児童の早期の把握や援助活動等が適切に進められるよう、構成員の資質向上を図る研修会の開催や児童相談所による専門的な助言・支援に努め、ネグレクトをはじめとする児童虐待の防止に取り組んで参りたい。

 

6 厳しい経営状況にある県内の漁業者に対し、県はどのような支援を考えているのか。

(知 事)
水産業は本県の主要な産業の一つであり、低迷する地域経済の活性化を図るためにも、水産業の再生が不可欠であるが、県内の多くの漁業者は長引く漁業不振に伴う多額の固定化債務により、漁家経営が圧迫され、このままでは事業継続さえ困難となりかねない非常に厳しい経営状況にあり、漁家経営の立て直しが喫緊の課題である。 このような状況の中で、国においては経済危機対策補正予算で漁業緊急保証対策事業を創設し、漁業者が県の利子補給資金を無担保で借り入れる際の保証料の助成、万が一、代位弁済が発生した場合の信用保証機関に対する経費助成など、資金融通の円滑化による漁業者の再生を図ることとした。 県では、6月補正予算で販売不振に陥った真珠・真珠母貝養殖業者に対する無利子資金の創設を行ったが、これに加え、今回、国の施策に呼応し、漁業者が緊急保証対策を最大限に活用することができるよう、漁業者が借りやすく、また返しやすい超長期かつ超低利の固定化債務解消のための借換資金を県単独で創設し、漁家経営の再生を強力に支援することとしたところである。 なお、政権交代に伴い、漁業緊急保証対策事業も現在、執行が留保されているが、お話のとおり県内の漁業者は、県の資金と国の緊急保証対策に大きな期待を寄せていること、また水産業は南予地域や瀬戸内海島しょ部での地域振興の核となる産業であることから、県としては早期の事業執行を強く望んでいる。




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